『SFマガジン』最新号先取り批判

クソーッ! 『SFマガジン』最新号の特集はコニー・ウィリスかーっ! 絶対買わんっ! 以下、こんないい加減な文章なのに、一応ネタバレ注意!

「わが愛しき娘たちよ 」*1って、結局 TENGA の話ですよね? そうでしょ?

未来の寄宿学校の男子学生たちの間で TENGA みたいなものが流行って、それを女子学生たちが禁止に追い込む話……。

「ちょっと待ってよ! そんな一面的な裁断の仕方って、ないでしょ! 大体あれは──」
「そう! 生物! だから動物虐待にもなっちゃってるわけで……、性の問題だけじゃなく、もっと重層的な問題で……、って……。んじゃ、TENGA のほうは問題なし? そうかな? ウィリスのあれが流行ってた頃って、『女性器が女性の身体を離れ、それが切り取られた状態で流通に乗り、売買され、消費ないしは搾取されていることについての、女性としての、なんとも言えない違和感が……』なんて言い方、流行ってたよね? そのものズバリじゃなかったろうけど、小谷真理さんなんかも、そんな風なこと、言ってなかった? それじゃ、生物/無生物に関係なく、やっぱ TENGA 禁止? 果てはオナ禁? なんかの宗教の原理主義みたいになって来ちゃったね? そう言えばウィリスって、若い作家たちの『聖書』からの引用がヘン──、みたいなこと、どっかで書いてなかったっけ?」
「そんなこと言ってないでしょう! それでもあなた方男性たちは、生きて動いて過剰なものまで付いてしまっている TENGA としてじゃなく、分割不可能な開かれた全体として、他者を見る必要があるんです! そしてあの、可哀そうな生物についても、男性の性処理に有用だという部分以外も含めた開かれた全体として──」
「そう、じゃ、TENGA についても開かれた全体として? そもそも開かれた TENGA って何?」
「その TENGA だって、社会ないしは広義の経済の中に埋め込まれた状態で、再解釈してみる必要があるんです!」
「そうかな? すると僕には、切り取られた男性の姿のほうが、よく頭に浮かんで来るな……。社会から切り取られて……。いやすでに、小・中学校の頃からクラスから切り取られて……。恋人は二次元で……。セフレは TENGA で……。今キモッて思ったでしょ? 自分でもそう思うよ。だからそんな奴は、他者を見たりなんか、しないほうがいいんだよ。なぜって、そいつが他者を見てるシーンって、その他者のほうでも、そいつが見えちゃってるシーンだからね? それってやっぱ、キモいんでしょ?」
「だからそもそも、そのキモいのを止めればいいんですっ!」

『スタトレ』好きの王道のSFファンが、ユルいSFファンを馬鹿にする時にも、この手の話の組み立てって、入って来ますよね? 「ちゃんと他者と向き合って」……、とかってヤツ……。宇野常寛氏の『ゼロ年代の想像力*2にも、そんな部分、ありましたっけ……。まあ『スタトレ』好きが本当にSFファンの王道なのかは、さらに王道なひとたちからの異論があるのでしょうが……。

今回も難癖で失礼! バイバイッ!

*1:コニー・ウィリス『わが愛しき娘たちよ』大森望訳、早川書房(ハヤカワ文庫SF)、1992年、所収.

*2:宇野常寛ゼロ年代の想像力早川書房ハヤカワ文庫JA)、2011年.